今回ももじゃくんがリポートします!
かけはしに通うあるこどもたちと、中村五郎商店さまがつながりました。

6月、こどもたちとボランティアさんで蒔いた大豆。無農薬で育てたため、カメムシや幼虫の食害、夏の雨不足など、何度も「もうだめかもしれない」と思う出来事がありました。それでも水を運び、みんなで見守り続け、年が明けて無事に収穫。その後は、こどもたちや保護者、ボランティアさんたちと脱穀・選別を行いました。
苦労して育てた大豆を前に、次に生まれたのが、
「この大豆で納豆を作ってみたい!」
という思いでした。そこで2月12日。こどもたちと一緒に大豆を持って、中村五郎商店「おとめ納豆」の中村 弘さんを訪ねました。
苦労して育てた大豆を納豆にしたい
そして2月12日。こどもたちから中村さんへお願いしました。
「かけはしで作った大豆を、納豆にしてもらえませんか?」
中村さんは、袋から大豆を取り出し、一粒一粒じっくり眺めます。
少しドキドキしながら待っていると――
「できますよ。」
その一言に、こどもたちは大喜び。そして中村さんは、納豆ができるまでを丁寧に教えてくださいました。
大豆を一晩水につける。蒸す。納豆菌をシュッシュッとかける。40度ほどに保たれた「室(むろ)」に一日入れる。そして冷蔵庫へ。納豆づくりには、ほとんど休みがありません。
普段何気なく食べている納豆が、たくさんの手間と時間をかけて作られていることを、こどもたちは初めて知りました。
「まずい納豆」が人生を変えた
そして中村さんは、納豆づくりだけでなく、ご自身の人生についても話してくださいました。
中村五郎商店の3代目として生まれた中村さん。こどものころは、毎日身近にあった納豆を、それほど食べていなかったそうです。ところが18歳頃になって、あらためて食べてみると、
「おいしい。」
と感じるようになりました。その後、一度はサラリーマンになります。でも営業の仕事は自分には合わない。
「自分は何をしたらいいんだろう。」
自分探しをしながら外国へ行ったとき、そこで納豆を食べる機会がありました。その納豆を食べて思ったそうです。
「まずい。うちの納豆のほうがおいしい。」
それが、中村さんが家業の納豆屋を継ぐきっかけになりました。路頭に迷っていた時期に出会った一つの納豆が、自分の進む道を教えてくれた。こどもたちにとっても、とても印象に残るお話でした。


かけはし納豆から広がるこどもたちの学び
それから約3週間後。中村さんから、もじゃくんに連絡が入りました。 「かけはし納豆ができました!」 「うおーーーーー!!!」 と喜びが声に出てしまったもじゃくん。すぐに中村さんのところへ。出来上がった納豆を受け取った瞬間、本当に感無量でした。 そしてその日は偶然にも、かけはしで味噌づくりをする日。居場所に戻って、 「みんなー!中村さんが、かけはし納豆を作ってくれたよ!」 と伝えると、こどもたちも大喜び。ごはんとお味噌汁、そして自分たちで育てた大豆からできた「かけはし納豆」を、みんなでいただきました。 「豆が大粒!」 「こんなにおいしいんだ!」 「本当においしい!」 あちこちから声が上がりました。 普段なら、スーパーで買って食べる納豆。でも今回は、種を蒔き、育て、水を運び、収穫し、脱穀し、選別し、そして地域の納豆屋さんにお願いして、ようやく一つの納豆になりました。 その経験をしたこどもたちから、今度は、 「豆腐も作りたい」 という声が生まれました。 そして実際に、かけはしでは味噌づくり、きなこづくり、豆腐づくりへと活動が広がっていきました。 一粒の大豆から、こんなにも学びが広がっていく。 それはきっと、中村さんが単に「納豆を作ってくれた」からではありません。 こどもたちが苦労して育てた大豆を見て、 「大切につくります。」 と受け止め、思いを込めて納豆にしてくださった。その中村さんの気持ちが、こどもたちの心に届いたからこそ、 「もっとやってみたい」 という次のわくわくにつながったのだと思います。 地域には、たくさんの仕事があり、たくさんのプロがいて、たくさんの人生があります。 そんな地域の大人との出会いが、こどもたちの世界を少しずつ広げてくれる。 これからもかけはしは、そんな出会いをつくる、 「こどもと社会のかけはし」 でありたいと思います。 中村さん、こどもたちの大豆を大切に受け取ってくださり、本当にありがとうございました。


写真・文=廣瀬 貴樹(かけはし代表)
