2024年が明けて間もない1月7日。お天気に恵まれ、予定通り「走らないサッカー&スポーツトークをしよう」の講座がひらかれました。講座は満員、41名の方にご参加いただきました。講師は、大多和亮介さん(大和シルフィード代表取締役社長、湘南ベルマーレ副社長)、野原慎太郎さん(横浜清陵高校家庭科教諭、野球部監督)です。当日の様子をご紹介します。


走らないサッカー、ゴール直後の一コマ。あふれ出た喜びでチームはバンザイ!
講座の最後に集合写真を撮りました!ポーズは楽「しー」の「C」!

走らないサッカー

受付を済ませたこどもたちと親御さんは、コートにおりて次々とボールで遊びだしました。コートでは今回の講師である大多和亮介さん(以下、亮介先生)と野原慎太郎さん(以下、慎太郎先生)、慎太郎先生が赴任する清陵高校の野球部の生徒5名が参加者親子を出迎えてくれました。かもめパークの整備された人工芝が眩しく緑色に輝いて、これから始まる講座への期待感が高まります!

開会宣言をし、まずはウォーミングアップ。二人組になって手を繋いで走る、ちょっとユニークなリレー。ボランティアの野球部の高校生と組んだ子、兄弟で組んだ子、親と手をつないで走った子も。久しぶりに親子で手をつなぐ参加者も多かったのではないでしょうか。

真ん中の鬼に捕まらないようにマーカーを回るリレー
歩きながらのパス。走らないサッカーの練習です
リレーのあとはパスをつなぐウォーミングアップを済ませ、いよいよ試合です。亮介先生からは走らないサッカーのルール説明がありました。一番大事な約束は「笑顔でプレーをすること」。笛の音で試合が始まると、早速小走りしてしまうこどもと大人が続出しました。「今のは走っちゃってたね!」「どんまい!」「足の長さがもう少し長ければ間に合ったのに」などの会話と共に、笑い声がよく聞こえてきました。

プレーをしているうちに「走らないサッカーだからこそのおもしろさ」が分かってきた方も多かったのではないでしょうか。歩くドリブルは時間がかかるので自然とパスが増えて、いろいろな人にチャンスが巡ってきます。また、プレーに足の速さが関係ないのはもちろんのこと、歩いてボールを蹴るためボールの勢いが弱く、トラップのうまさも関係なくなっていました。本当は年齢や技術的な差があるはずなのに、ボールに偏りが少なく、だれでも参加しやすいゲームになっていました。

参加したこどもからは「もどかしい。走っちゃう。でもプレーしているうちにだんだんおもしろくなってきた」「協力して楽しかった」「歩いたから疲れなかった」「下手とか関係なくできて、おもしろかった」「体の接触が少なかったからムカっとせずにプレーできた」などの感想があがりました。
親御さんからは「疲れなかったから楽しかった」「約束通り笑顔でプレーしたら楽しかった」などの声をいただきました。

1時間強のプレーで心も体もすっかり温まりました。プログラムは次のスポーツトークへ。


亮介先生のルール説明をみんなで聞きました
各チーム大人とこどもが入り混じっています

スポーツトーク

かもめパーク内の会議室に移動し、暖かいお茶やジュース、お菓子を受け取りました。こどもたちと講師の先生、もじゃくん(かけはし代表:廣瀬)は床に円くなって座り、食べたり飲んだりしながらスポーツトークがスタート。

亮介先生と慎太郎先生がどんなキャリアをお持ちの方なのか、もじゃくんから紹介がありました。

〇亮介先生(大多和亮介)
1982年生まれ。東京都出身。
早稲田大学大学院人間科学科終了後、横浜マリノス株式会社入社。家業である学校法人まこと学園副園長を経て、2016年より横浜マリノ株式会社へ復帰、19シーズン最終戦ではJリーグ記録となる63,854人の観客動員を記録、チームはJ1リーグ優勝を果たした。
2020年2月に大和シルフィードへ移籍、同年10月に大和シルフィード株式会社を創設し代表取締役。大和シルフィードのプロ化を進める。2023年からは湘南ベルマーレの役員を兼務。
Jリーグ社会連携部コアメンバー、一般社団法人日本女子サッカーリーグ理事、桐蔭横浜大学非常勤講師、ほか。

亮介先生はサッカーに精通していると周囲から思われていますが、選手として取り組んできたスポーツはアルペンスキーです!


〇慎太郎先生(野原慎太郎)
1982年生まれ。大阪府出身。
小学校から野球を始め、東海大相模高校3年時に甲子園での全国優勝を経験。横浜国立大学4年次は主将。同大学教育学研究科終了後、神奈川県立岸根高校、大師高校を経て、現職。野球部の指導実績は県8強、16強など。
2011年神奈川県優秀実績教員表彰。2022年より高等学校の家庭総合及び家庭基礎の教科書(開隆堂)の著者の一人。

慎太郎先生は小さな頃からずっと野球の世界にいます。その歴はなんと34年!

講師は右から慎太郎先生、亮介先生。左はかけはし代表廣瀬(もじゃくん)
スポーツトークの主役はこどもたち。こどもたちの質問に先生方が答えてくれました。では、こどもから出た質問と先生方の回答をいくつか見てみましょう!

Q、「速く走りたい」「サッカーで押し負けたくない」「キーパーになりたい」「バッティングを上達させたい」どうしたらうまくできるようになりますか
(亮介先生の回答)目標を作ったあとに、その目標に向けた小さな階段(小さな目標)を準備するといい。
(慎太郎先生の回答)あとは、できるまで諦めずにやることかな

Q、体力はどうやったらつきますか
(亮介先生の回答)
「ロング、スロー、ディスタンス」1時間歩くなど、ゆっくりした運動を長くすると効果があがります。運動中の心拍数は1分間に110前後が目安。
(慎太郎先生の回答)
「運動・栄養・休養」生活リズムを整えることが大切。たくさん運動をして、しっかり食べる。今日ここにいる野球部員の食事は1日に6回。部活の練習中にもおにぎりなどを食べます。筋肉は寝ている間に育ちます。休養も大事。


高校生がお弁当を見せてくれました。トートバッグからランチジャー、おにぎり、総菜パン、果物、ゼリー飲料など次々と出てきて、会場からは歓声があがりました!
Q、慎太郎先生に質問です。なぜ家庭科の先生を選んだのですか
(慎太郎先生の回答)家庭科がおもしろいと思ったから。単純にそれだけです。家庭科を選んだ時に男性が家庭科を教えるなんてと反対する人がいたけれど、自分がやりたいことを選んでよかったと思っている。自分で決めた道だから誰のせいにもせずに済んでいる。「世の中の当たり前」をとっぱらってみるといいよ。
(亮介先生)今聞いていて、ぼくも慎太郎先生と通じるところがあると思いました。マリノスを辞めて、シルフィードに移籍したとき、周りからは「もったいない、なぜ?」と言われました。でもその後のシルフィードでの活動がベルマーレの副社長につながっています。

その他にも「三日坊主をやめたい。どうしたら続けられるか」「亮介先生が選手として活躍していたスキー競技はなにか」など、こどもたちは次々と質問を出しました。

最後に講師の先生方から一言ずついただきました。
(亮介先生)ぼくは中学3年生の時に、長野オリンピックで里谷たえ選手が金メダルをとった瞬間に居合わせた。会場全体が沸き上がるような歓声に包まれ、言葉では表現できない感情を味わった。その経験から、ぼくは会場全体が沸き上がるような光景を作る人になりたいと思った。その場所に行ったから、たまたまぼくにはスポーツという根っこができた。こういうのをちょっと難しい言葉で原体験っていうんだけど、みんなはもうそういった体験をしているかもしれないし、これからかもしれない。焦らずにいろいろ経験して欲しい。
(慎太郎先生)一人でもいいから友達ができるといいと思う。そして、スポーツは友達ができやすい。スポーツは人と出会う機会があり、一緒に取り組むことで困難を乗り越えられる。いい友達ができると楽しい。出会った友達を大切に!

亮介先生、慎太郎先生、貴重な機会を本当にありがとうございました。


こどもたちの話や質問から得られたキーワード
こどもキャリア大学は2021年に企画し、実施しはじめた講座。こどもたちとプロフェッショナルで魅力的な大人との感動の出会いを作り、「体験」を通してこどもたちが自分を見つめたり、自分の生き方を考える時間を作りたいという思いのもと毎年開催されています。今までは6〜8回の連続講座で有料でしたが、今年は1回開催にし無料でご提供できました。

「来年もぜひこのような機会を」という声を参加者の方からいただいています。また、来年もみなさんにお会いできますように!


写真・文=松本 裕美枝(かけはしライター)、写真=矢沢 純直