毎回違った分野の魅力的な講師を迎えて開催している「こどもキャリア大学」は、第6回目を迎えました。 講師は、映像プロデューサーで株式会社Aww/NION代表取締役の守屋貴行(もりやたかゆき)さんです。守屋さんは2022年の東京パラリンピック閉会式のプロデューサーとして指揮をとった経歴があり、また、2025年の大阪万博ではキャラクターデザイン選考委員、実行委員を務められています。
守屋さんの活躍
講座ではまず手始めに、守屋さんの会社にて手がけたInstagramのTVCMを見せてくれました。見たことがあるCMにこどもたちの目が輝きます。「八村選手に会ったことはあるんですか?」「このCMにもCGが使われているんですか?」こどもたちの興味が一気に高まりました。 守屋さんは映像アシスタントからスタートし、大河ドラマやCMのCGを担当。その後仲間と一緒に会社を立ち上げ、ゲーム制作などに関わっているうちに「人間と見まちがえるほどのクオリティのCG技術」を身につけたそうです。その技術を代表するのは「imma(イマ)」という女の子のヴァーチャルヒューマン。「どこか生身の人間と違う」という違和感を感じさせないため、実在しないことがにわかに信じがたく、会場が騒然としました。イマちゃんはCG加工を施すことで、実在の人間とツーショットを撮ったり、自然な表情や身振り手振りでTV出演をしたりしています。
イマちゃんのコンセプトや活躍を紹介し終えたところで、守屋さんは若い才能に話を移しました。
好きで夢中になって、のその先は
守屋さんが紹介してくれたのは、17歳~20歳の若いクリエイター。どのクリエイターも紙に絵を描くことから始め、デジタルに移行し、その作品をSNSに公開するなどで目に留まり、仕事になっているそうです。守屋さんは、若いクリエイターを一人ひとり紹介し、画像や動画の作品を見せてくれました。きれいで細かく、かつバランスよく描き込まれていて、表現の仕方もおしゃれ!カッコイイの一言に尽きました!「好きで、夢中になって、それが仕事になっていく、そんな時代がもう来ている」と守屋さんは未来を思い描き、こどもたちに語りかけてくれました。 休憩前の質問タイムでは「ヴァーチャルヒューマンを一人作るための制作時間はどのくらいですか?」「どういうところでアイデアが浮かぶんですか?」「どうやってデータを作っているんですか?」など、たくさんの質問がでました。休憩に入ってからも、守屋さんはこどもとゲームの話をしていました。私にとっては耳馴染みのない単語でゲームの話題をこどもと楽しんでいる守屋さんは、こどもに近い好奇心を持ち続けている大人、のめり込む情熱がある大人なのではないかと感じました。
私のヴァーチャルヒューマン~ワークショップ~
ヴァーチャルヒューマンへの理解が深まったところで「こんなヴァーチャルヒューマンがいたらいいな!」とアイデアを練るワークショップを実施しました。 黙々と紙に描き続ける子、守屋さんに話しながらコンセプトを固めていく子、周りの子と発表し合ってアイデアを熟成させていく子、取り組み方は様々。アイデアが浮かぶと、夢中になって描き込む姿がありました。
こどもたちから出たアイデアは、ふつうのおじさん、ピエロ、スタイリスト、カウンセラーなど多種多様。守屋さんによるとスタイリストやカウンセラーなどは既に実用化が試みられているそうです。「大人もこどももアイデアのレベルで上下はないです。僕の会社でも、こんな風にみんなでアイデアを持ち寄って形にしています。ワークショップで考えたヴァーチャルヒューマンには、自分自身のエッセンスが含まれています。そういった好きや興味を大切にしていって欲しい」 今回、守屋さんがこどもたちに伝えたかったメッセージは「人生は好きをみつける旅である」です。守屋さんご自身も「好きなことをやってきたけど、30歳になった頃にようやくなぜ好きなのかが分かった」と話しています。好きなものやその理由を探すのには時間がかかりそうですが、「好き」は人生の旅を共に歩む、強力な仲間になると思いました!
さて、今回で全6回のこどもキャリア大学は幕を閉じました。 受講してくれたこどもたち、本当にありがとうございました。いろんな子の発想がこの講座の中で共有でき、またひとつ考える時間が生まれました。 講師を務めてくださった方にも感謝の気持ちでいっぱいです。講師の方々のお話は情熱に溢れ、こどもたちも関わったスタッフもそれぞれ、講師の方から受け取った考え方や思いがありました。 会場を貸してくださったテアトルフォンテさま、協賛してくださっている企業さま、たくさんの方々のご協力に御礼申し上げます。 来年度はまだ未定ですが、またお会いする機会をぜひ!
写真・文=松本 裕美枝(かけはしライター)