毎回違った分野の魅力的な講師を迎えて開催している「こどもキャリア大学」は、第4回目を迎えました。
講師は、新薬を開発するために実施する「治験」のスペシャリストの廣瀬瑛美子(ひろせえみこ)さんです。
薬ができるまでの道のり
薬が開発されて使えるようになるまでの工程を知っている人は、大人でもそう多くないと思います。今回の講座は、薬ができるまでの手順やかかる年数など「薬開発の全体像」を把握するところからスタートしました!
薬の開発は、研究者が薬になりそうな成分を見つけるところから始まります。「病気に効くか」「安全性に問題はないか」「適正な服用量はどのくらいか」ひとつひとつ検証して、約10~20年かかって薬が開発され、私たちの手元に届いていると分かりました。廣瀬さんは、途中でクイズを出題しながら、かみ砕いて開発の工程を教えてくれました。
「こんなに苦労して時間をかけて薬ができていると初めて知った。薬の開発に関わっている方に感謝したいと思った」と、ある子は話していました。
治験の仕事をイメージしてみよう!
廣瀬さんが勤めている会社は、製薬会社から依頼を受けて治験を実施する「治験のスペシャリスト」の会社です。廣瀬さんの仕事は、薬や病気の膨大な資料を用意したり、病院の先生や看護師と連携したり、患者さんの病状をモニタリングしたり、データをまとめて報告書にしたりと多岐にわたるとのこと。薬の認可を目指して、お医者さんと一緒にチームになって活動するそうです。
廣瀬さんは治験の仕事を「人の役に立つ仕事」というやりがいに加えて、「日本全国いろんな病院に行くから、仕事以外の時間は旅行気分が味わえる」「製薬会社や医者などたくさんの関係者と意見交換をするため、人と話すことが好きな人には向いている。お医者さんから信頼されると嬉しい」など仕事のおもしろさを話してくれました。
「厚生労働省の認可が下りた時はどんな気持ちになりますか?」というこどもの質問に対し、「認可が下りた時は本当にうれしいし、下りなかった時には本当にくやしい」と話してくれました。廣瀬さんは、担当したプロジェクトの約半数において、認可が下りているそうです。
「治験は一般的にあまり触れる機会がない仕事で、専門性が高く、大人にもなかなか理解してもらえない」と廣瀬さん。途中、休憩を挟みながら約60分間にわたり、薬ができるまでの道のりと仕事の説明をしてくれました。
もじゃくんと廣瀬さんの息が合った寸劇
後半は、治験を実施するお医者さん(廣瀬さん)と、治験にチャレンジする患者さん(もじゃくん)の寸劇を基に、ワークショップが行われました。こどもたちが治験のスペシャリストになり、患者さんの病状が正しくモニタリングされているかを確認しました。
講師の廣瀬さんからのメッセージ
講師の廣瀬さんは中学生の時にいじめを経験しています。当時、熱中したのは勉強でした。中休みや昼休みに勉強に励むことで、一人ぼっちでも周りを気にせずに過ごせたと言います。
廣瀬さんは運動に苦手意識があり、自分が取り組みやすい勉強に早いうちから集中しました。そのかいあって、難関高校に合格。大学在学中に薬剤師の国家資格を取りました。活発な性格の廣瀬さんは、人と話して仕事を進める治験を自分に合う仕事だと感じたそうです。
講座の最後には「自分のやれること、得意なことを伸ばすべき!」「勉強はやらないより、やったほうが絶対良い!」「時の運や人の縁は大事!たまには自分の直感を信じてみるのもあり!」と、自身の経験から成る学びをこどもたちに伝えてくれました。
廣瀬さんはいじめで苦しんだ中学生の時の自分を思い出して、過去の自分に「大丈夫!」と伝えるつもりで、こどもたちにもメッセージを伝えてくれたのかもしれません。
廣瀬さん、ありがとうございました!
第5回は、海外で数々の賞を受賞している写真家の坂本貴光さんの講座が、2月26日に開催される予定です。世界で活躍する芸術家の坂本さんと、対話する時間をたっぷり設けます。
坂本さんの考え方から刺激を受けたい親御さんのご参加を歓迎しています。ご希望の方は、当日お声がけください。
第5回だけの個別の申し込みも受付できます。
ぜひご参加ください。
お申し込み先
写真・文=松本 裕美枝(かけはしライター)