毎回違った分野の魅力的な講師を迎えて開催している「こどもキャリア大学」は、第3回目を迎えました。

講師は、泉区役所のこども家庭支援課で係長を務めている堤大造さんです。堤さんは、民間企業を2社勤めた後、横浜市職員になりました。

講師の堤さん。横浜市職員の鮮やかなブルーのジャケットを着て、お話してくれました


横浜市職員の仕事を知ろう

「公務員の仕事のイメージを、言葉で書いてみよう」講座の導入として、もじゃくん(代表;廣瀬)がこどもたちに聞きました。「スーツを着ている」「国の整備」「事務仕事」「無機質」「安定している」さまざまなイメージが、こどもたちから発表されました。堤さんはうなずきながらこどもたちの答えを聞いていました。

「何をしているのか、分かりにくい仕事ですよね」と堤さん。今回は「公務員とは?横浜市職員は何をしているの?」という仕事の理解から講座をスタートしました。
横浜市庁舎やそこで行われている業務の紹介。泉区役所(正式には泉区総合庁舎)は横浜市庁舎とどんな関係なのか、組織構造も話してくれました
横浜市職員の仕事は「ゆりかごから墓場まで」と表現されることがあるそうです。具体的には、子どもが生まれる時の母子手帳の発行や出生届から始まり、亡くなった時の死亡届など。

そこで「泉区役所ではどんな手続きを扱っているのか」こどもたちにクイズを出しました。
クイズの様子。「妊娠したお母さんは、どこの窓口を案内すればいいでしょう?」この問題の答えを、区役所の窓口一覧の中から、こどもたちが選んでいます
「区役所の業務は幅がありすぎて、勤めていても詳しい説明が難しい業務もあります」と堤さん。2年前に新築移転した横浜市庁舎は、さらに珍しい部署があるそうです。「横浜市庁舎には他にどんな部署があるのですか?」というこどもの質問に「例えば国際局。ウクライナ情勢で横浜に避難してきた外国の方に住むところを提供したり、日々の生活の支援をしている部署があります。」と堤さんは答えてくれました。

横浜市職員は予想を上回るバラエティーに富んだ業務で、こどもたちからは業務内容についての質問がたくさん出されました。

人生チョイスゲームで遊ぼう!

後半のワークショップでは「人生チョイスゲーム」に取り組みました。
最初はみんな同じ場所からスタートし、2択のどちらかの人生を選んで進んで行くゲームです。選択肢を決めたら「なぜその選択をしたのか」こどもたちに理由を話してもらいました
終わりが近づくにつれ、進む道がバラバラになってきました。選択肢の中には、自分でお店を経営するチャンスが訪れたり、ブラジル転勤が決まったり。予想外の展開に、悩むこどもたちの様子が見られました




ゲームには講師の堤さん、もじゃくんも参加し「なぜその選択肢を選んだのか」の理由を、こどもたちからうまく引き出してくれました。ある子にとっては「小さい会社」が魅力的であり、ある子にとっては「カッコよさ」が選ぶ基準の一つであり、また、ある子にとっては「人間関係」が選択に大きな影響を与えていました。

ゲーム後、こどもたちからこんな感想が発表されました。「人生にはたくさんの選択肢があることが体験できた」「転職は勇気がいることだと分かった。堤さんは転職することで、もっと自分に合った仕事に出会えていて、いいなと思いました」真剣に取り組んだからこそ、出てきた感想だと思いました。
身を乗り出して、選択したマスの文章を読んでいます。自分と違う選択をする友達の話に、驚いたり、うなずいたりする場面がありました

堤さんの人生年表と、こどもたちへのメッセージ

堤さんは「映画を扱う仕事に就きたい」と、映画配給会社を目指して大学4年生の時に就職活動をしていた時期があります。社会人中途採用のみの小さな映画配給会社の募集を見つけた堤さんは、「採用試験を受けさせて欲しい」と手紙を書きました。配給会社の社長さんは、雇うことはできないと堤さんに伝えた上で、堤さんに会って話を聞いてくれたそうです。

社長さんとの会話を通して堤さんは「映画にこだわらずに、仕事をしてみよう」と思い直し、お菓子の会社に就職し、販売を担当しました。

堤さんが話し終えた後、ある子から「転職でもう一度、映画の仕事を受けてみる気はなかったのですか?」と質問が出ました。堤さんの答えは「ひとつ仕事をしてみたら、映画にこだわる必要はないと思った」でした。社会人を経験し、考え方が変わったそうです。

2社の民間企業を経験し、現在は横浜市職員として勤務する堤さん。「仕事は40年あまりと、長い期間携わっていくものです。仕事について、親など身近な人から話を聞いたり、お店で売られている商品やテレビCMなどを見たりする時に、自分が働くことをイメージしてほしいと思います。イメージしてやりたい仕事ができても、実際に仕事をしてみると想像とは違う場合があるし、自分の生活が変わると、理想とする仕事が変わることもあります。自分自身にとって、より良くなるように歩んでもらえたらいいなと思っています」こどもたちへのメッセージが語られ、講座は幕を閉じました。

今までの人生を語る堤さん。こどもたちはスライドを見たり、メモをとったり、真剣に聞いていました
講座の後「『横浜市職員として一緒に働きましょう!』とこどもたちを誘うのを忘れてしまった」と、堤さんは笑って話してくれました。堤さんと過ごした2時間で、こどもたちは横浜市職員の仕事を身近に感じ、魅力も感じてもらえたのではないか思います。

第4回は、薬の開発業務に従事している廣瀬瑛美子さんの講座が1月29日に開催される予定です。どんなお仕事なのか楽しみですね。

第4回だけの個別の申し込みも受付できます。
ぜひご参加ください。
お申し込み先
写真・文=松本 裕美枝(かけはしライター)