毎回違った分野の魅力的な講師を迎えて開催している「こどもキャリア大学」は、第2回目を迎えました。

講師は、JALエンジニアリングで航空機の整備に10年たずさわり、現在は広報担当として活躍されている吉田達央さんです。
今回は羽田空港の整備場で、講座が開催されました。

整備場見学のようす。間近で見る飛行機はとても大きく、太陽や照明の光を反射して、白く光り輝いていました。カッコイイ!!


整備士ってどんな仕事?吉田さんってどんな人?

講座の導入で3択クイズが出されました。正解は「翼の中」とありますが、問題は「飛行機の燃料はどこに入っているでしょう?」でした
「整備士は、飛行機が空港に到着する前から仕事が始まります」吉田さんは、飛行機が着陸し、次の離陸に向かうまでの一連の整備について、話してくれました。

パイロットや乗務員との情報交換、電源ケーブルの接続、タイヤ・ブレーキ点検、エンジン点検、給油、機内点検・清掃……さまざまな仕事が紹介されました。

「これらの整備は同時に行われています。さて、着陸してから次の離陸の準備が終わるまで、どのくらいの時間で整備をするでしょう?」と吉田さん。
2時間や3時間あたりで、こどもたちの手がたくさんあがりました。
「国際線だとみんなの予想通りで、だいたい2〜3時間です。国内線だと35分でこれらの整備を終わらせます。」
正確で早い仕事に、会場は騒然としました。
真剣に聞いているこどもたちの様子。吉田さんは整備士の仕事をスライドで紹介してくれました
吉田さんは、小学生の時に海外旅行を初めて経験。飛行機のかっこよさに魅了されて、高校からは家族と離れ、全寮制の航空専門の高校に通ったそうです。

そして、高校在学時に資格や免許を4つ取得。JALエンジニアリングに入社してからも、通信制の大学に通うなど、資格を取るための勉強は続きました。

一つまた一つと試験に合格し、現在は十数種類の資格や免許を持っています。

整備をしていく上ではさまざまな資格が必要です。資格取得のために勉強してきたファイルや教科書を見せてくれました。吉田さんの前に積まれた教科書の厚さと量がすごい!!
吉田さんは、最初はパイロットに憧れていたそうです。しかし、飛行機に関わっていくうちに整備士の道に惹かれていったと言います。
「整備士になって本当に良かった。飛行機をこんなに詳しく知ることができた」話しながら、吉田さんの顔はほころんでいました。パイロットから整備士へ、夢は形を変えて、吉田さんを笑顔にしているようです。

整備場を見学~飛行機とご対面~

整備場へ降りていくこどもたち




整備場でスタッフが撮影した最初の1枚。スケールの大きさが伝わりますか?

整備場に足を踏み入れると「うわー!広い!」「天井高い!!」と、思わず声が出てしまう子がいました。
今まで経験したことのない高さの建物の中に、飛行機が5台ほど並び、たくさんの機械や金属製のカートが整然と置かれています。

整備場には、ヨーロッパ製のエアバスA350とアメリカ製のボーイング777などの機体があり、実際に整備士さんが、エンジンの分解作業やタイヤの交換作業をされていました。

こどもたちは、エンジンの前に立って、大きさを体感し風圧を想像したり、翼の下を歩いて、その厚みや造りをじっくり見ることができました。

間近で見たエンジンは美しかったです。丁寧に整備されていることが伝わってきました
翼の真下に立つと、翼が迫ってくるような重厚感があり、飛行機の大きさがさらに大きく感じられました。この飛行機はタイヤの交換作業中でした
飛行機も、自動車の車検と同じように、2年に1度大がかりな検査があります。2週間ほどかかるこの検査では、足場も組まれていました
もう間もなく着陸する機体を、整備場から見ることができました。整備場内の飛行機を見たり、空を飛んでいる飛行機を見たり、こどもたちは忙しそうでした。
タイミングがよく、JALの飛行機の着陸を見ることができました


空を飛べる強度を持つキーホルダー

こどもキャリア大学では、こどもたちの体験的な学びをサポートしたい思いがあり、後半はワークショップを行っています。

今回のワークショップは、機体整備の時に出た端材を使って「名前入りキーホルダーを作る」というもの。
JALエンジニアリングの吉田さんをはじめ、いろいろな方にご協力いただき、実現しました。

まず、実際の写真をこどもたちに見せながら、塗装整備の説明をしてくれました
キーホルダーの素材はチタン合金。飛行機のエンジン近くに使う、熱に強く、強度のある金属です。チタンのプレートには、機体塗装で余った白と赤の塗料が塗ってありました。

そこにマスキングテープを使い、ステンシルの要領で名前をつける準備を、こどもたちがしました。5mm程のローマ字がマスキングテープに切り込みされていて、ピンセットで剥がします。
自分の名前の切り込みが入ったマスキングテープを、ピンセットを使って一生懸命はがしました
いくつかの工程を経て、あとは塗料を吹き付けるだけになりました。
JALエンジニアリングの方が塗料を吹き付け、トップコートを施し、キーホルダーは後日届く予定です。

キーホルダーになったプレートの切り出されたもう一方は、整備の際に使われていて、すでに機体の一部となって今も世界を飛び回っています。空のロマンとこどもたちの思い出が詰まったキーホルダーになりそうですね。


今回こどもたちが体験した「ピンセットで剥がす作業」は、塗装担当の整備士さんが実際に行っている作業だそうです。
「アナログな細かい作業があることを、仕事を選ぶときに知っていましたか?」塗装を担当する整備士の方に、スタッフが聞くと「飛行機の塗装がしたくて整備士になったので、知っていましたよ」と答えてくれました。

整備の仕事だけを見ても、部品交換、給油、塗装、分解、組み立てなどさまざまでした。
「飛行機が好き」という気持ちで将来の方向性を決めても、何かしら自分に合う仕事が見つかりそうなほど、仕事の幅が広いと感じました。
ワークショップの様子。説明を聞きながら、細かい作業に取り組みました
講座は2時間半程で幕を閉じました。
「楽しかった人ー?」というもじゃくん(かけはし代表;廣瀬)の問いかけに、こどもたちの手がたくさんあがりました。

講座を一緒に進めてくださったJALエンジニアリングのみなさん、夢中になれる時間をありがとうございました。

事前打ち合わせやワークショップ、整備場案内など、こどもたちのために動いてくださったJALエンジニアリングのみなさん
講座の後には自由時間が設けられました。「離陸はどんな操作をするの?」こどもからの質問に、吉田さんは目にも止まらぬ速さで、スイッチやレバーを操作していました
最後までこどもたちの質問に答え続けてくれた吉田さん、JALエンジニアリングのみなさん、本当にありがとうございました
第3回は、横浜市職員、泉区役所の堤さんの講座が11月27日に開催される予定です。
2社の民間企業を経験され、公務員の仕事に就いた堤さんが大切にしていることは何か……
テアトルフォンテ創作室で開講します。

第3回だけの個別の申し込みも受付できます。
ぜひご参加ください。
お申し込み先
写真・文=松本 裕美枝(かけはしライター)