もじゃくん(かけはし代表;廣瀬)が書いたコラムが、タウンニュースに掲載されています。

すでに3回にわたり掲載されてきました。
「泉区版」のタウンニュースなので、読みたいけど手に入らない方も多いと思います。
そこで、今回コラムを紹介させていただくことにしました。

8月から月1回のペースで掲載中です


それでは早速、vol.1から順にご覧ください。

vol.1「土になりたい」 タウンニュース泉区版8/4発行

 2021年4月7日にはじめて「居場所」を開いた日から1年3か月が経ちました。
一人の子とはじまった居場所に、今は35人ほどのこどもが自分の行きたいときに居場所にやってきます。ある子は、自分で「学校には行かない」と決めていたのですが、居場所には自分の意思で、自分の足で通ってくれたのです。ただ居場所に来た当初は、ほとんど自分から人と交わることはありませんでした。

 けれど、そのうちもう一人の子との出会いによって、閉ざしていた心を少しずつ開いていきました。そこに言葉は必要ではありませんでした。いつも同じ空間に居てくれるという安心感と相手を気遣う優しさがその子と相手の子の心を自然に開かせたのだと思います。それから、居場所にくるたくさんのこどもたちやボランティアさんに、自分から話しかけたり、一緒に遊んだり、優しい言葉をかけたりするようになっていきます。
 以前は、「一人で生きていこう」と覚悟していたそうです。その覚悟の裏には、言葉にならない思いや心の傷があると感じました。居場所で過ごすうちに、「みんなで生きていこうという気持ちをつかんだ」と話してくれました。

 今、学校に行くことができず、悩み苦しんでいる子がたくさんいます。この1年間、多くのこどもたちと出会うことができました。その一人ひとりには、素晴らしい個性と他者を思いやる人間性、そして無限の可能性がありました。だから、私はこどもたち一人ひとりの力を信じぬき、その子らしい芽を自らの力で伸ばしていくことを支える”土”になりたいのです。今後も居場所から見えるものを綴っていきます。




vol.2「見えない壁」 タウンニュース泉区版9/1発行

誰でも初めての場所は少なからず緊張が走ります。
 どんな人がいるのかな、どんなことをするのかな、かけはしの「まなべる居場所」に初めて来た子。きっとその子の中にさまざまな不安や緊張を抱えながら来てくれます。私たち居場所のスタッフやボランティアは、その子の気持ちを受け止めながら、想像しながら、笑顔で迎えます。

 「出会えたことがなにより嬉しい」「来てくれてありがとう」
 「居場所」は、その子が”安心できる場”というのが、何よりも大事です。ある子は、部屋の中には入ろうとせず、廊下で足が止まっていました。部屋の中にはきっと、「見えない壁」があったのだと思います。私や他のスタッフは、その子と廊下で過ごしました。部屋が安心できないなら、部屋に入らなくても大丈夫。廊下が安心できるなら、その子と廊下で一緒に居る。そんな事実を積み重ねていく中で、その子は少しずつ、部屋の中に入ってきてくれるようになりました。
 そして私にいろんな話をしてくれたり、得意なことを披露して見せてくれたりしました。

 見えないけれど、たしかに存在している壁。それは、その子自身でしか超えることはできません。でも、絶対に無理矢理に壁を乗り越えさせようとはしません。その子が安心できる環境を守り、その子自身のタイミングで乗り越えるようにサポートしたいと思っています。
 居場所に何日も来ていなかった友達が、久しぶりに居場所に来たときのことです。その子は、久しぶりに来てくれた友達に駆け寄り、声をかけます。友達の見えない壁がその子には見えて、その壁を一緒に乗り越えようと、友達を支えてくれた姿でした。そして今では、居場所での友達の輪をつなぎ合わせる”かけはし”のような存在です。

vol.3「畑のちから」 タウンニュース泉区版10/6発行

 雨が降っている日でも、夏の暑さの厳しい日でも、かけはしの畑での活動「わくわく農園」を楽しみにしてくれている子が数人います。
 畑は服が汚れるし、地味な作業ばかりで面倒だし、力仕事で大変だ。こどもたちが嫌がるような要素をたくさんもった畑作業。なぜその子達は、自分の意志で畑にやってくるのでしょうか。

一人の子は鍬で畑を耕すのが好きで、カチカチの土を一心不乱に耕します。それは、ストレスが溜まりに溜まってやりきれない心を、全力で断ち切るかのように。一人の子は、一つの作業ではなく、いろいろな作業に興味をもって好奇心いっぱいに取り組みます。鎌で草を刈ったり、一輪車で草を運んだり、耕運機を持ってみたり。それは、なんでもやってみたい気持ちを思う存分に解放して、ひたむきに挑戦するかのように。また一人の子は、農業の意味や価値について自分の言葉で語りながら、笑顔でうれしそうに作業します。それは、アタマで考えられることと、カラダで感じられることを結びつけて、概念を自分のものにするかのように。

 学校に通っていて、休日の農園活動にだけ参加してくれる子や、かけはしボランティアさん、そして地域の方が「わくわく農園」を支えてくれています。畑にはこどもたちを癒したり、元気にしたり、笑顔にしたりする不思議なパワーがあると信じています。大変な作業をやり遂げ、疲れているはずのこどもたちの表情はいつもキラキラと輝いています。
 なぜ畑に行くのかという問いの答えは、一人ひとり違うかもしれないけれど、シンプルに「大変だけど楽しい」。それに尽きると思っています。今日もわくわくした表情でこどもたちが畑にやってきました。「よしっ、土づくりから頑張ろう!!」
「わくわく農園」の活動。今年の夏にピーマンの収穫をした時の様子です
もうしばらく掲載は続く予定です。
今後のコラムも、このブログでご紹介いたします!