昨年度に創設された「こどもキャリア大学」が2期目を迎えました。もじゃくん(かけはし代表:廣瀬)が、こどもたちに会わせたい魅力的な大人に声をかけ、今年度は6人の講師を迎えて開催します。

第1回講師は、横浜市旭区にて、認定こども園「希望ヶ丘幼稚園・保育園」園長として保育に携わっている市川慎二さんです。

第1回こどもキャリア大学がいよいよ始まりました。写真右が講師の市川さんです

こどもが否定されない、安心できる講座づくり

参加したこどもたちにとっては、初めて、あるいは久しぶりのこどもキャリア大学でした。

講師の市川さんは「否定しないから、安心して参加してもらいたい」と、最初の挨拶でこどもたちに語りかけました。

講座は「幼児期のできごとで心に残っていること」を、こどもたちにホワイトボードに書いてもらうことからスタートしました。
「特にない」「覚えていない」という答えを発表してくれた子に対しての、市川さんの答えは「OK!」
少し緊張して黙っていたこどもたちが、ほぐれた瞬間でした。


こどもキャリア大学では、講座の前半に講師の人生年表をもとに、これまでの人生について話していただき、後半に講師の仕事を知るためのワークショップを行っています。

前半の人生の話を聞いたこどもたちは、市川さんにどんどん質問します。

その質問は、資格に関わることや、市川さんの行動や人生の出来事の中で、そのときの大事な思いに迫るものでした。

市川さんがこどもたちの質問に丁寧に答えてくださり、こどもたちは、市川さんの生き方や価値観をさらに深めていくことができているように思いました。
人生年表で語られた市川さんの思春期。幼少期は家の方針により勉強ばかりの毎日。勉強が嫌いになり、思春期はゲームやギターに熱中したそうです
「丸、三角、四角、線を1つずつ書いてみよう」がこの日の最初のワークショップ。
書いた形を見せ合ってみると、三角が屋根になって家の形になっているもの、串刺しのおでんのような形のもの、人の顔にみえるもの、さまざまでした。
丸、三角、四角、線を書くワークショップの様子。こども同士で「何に見えるか」を言い合い、盛り上がっていました
「どれが正しいということはない、言われたことにも、みんな違う受け止め方をして、自由に表現しているということ。色々な場面で一人ひとりを認めることが、保育者の仕事だと思っています」と市川さんは話します。自分からみて当たり前と思っていても、みんなの当たり前ではないと思うことが大切です。


幼児期のこどもの絵には、当たり前がありません。
「2~3歳頃は、絵を仕上げるといった意識は少なく、途中でイメージが変わったり、最後に塗りつぶしたり、重ねたりしながら、思いのままに表現したり発散しています。ブロックとか粘土でも、最後にぐしゃぐしゃにして発散して楽しんでいることもあります」と、幼稚園のこどもたちの絵を写しながら、市川さんは話してくれました。
幼児期のこどもたちの絵について解説している場面
幼児期のこどもに「自分の顔をかいてね」というと、自分の顔だけでなく親や兄弟の顔も描く子がいるそうです。幼児期のその子にとっての「自分」とは「家族と共に存在する自分」なのではないかと市川さんは言います
どんな絵でも「先生、描けた!」と持ってくる絵は、どれも個性があって素敵と受け入れることが大切だそうです。

「受け入れられてきた子は、絵を描くことが好きになり、受け入れられなかった子は、絵を描くことが『嫌い、描けない、描いて』になりやすい。できる、できないの前に、注意されないようにとか、期待通りにしなければとプレッシャーにもなっていて、これは保育全般にあてはまること。」保育の核心に触れるお話でした。


こどもを否定しない、安心できる空間は今回の講座に限ったことではなく、市川さんが園長を勤める幼稚園・保育園でも同じなのだと感じました。

白熱!天まで届けペーパータワー

今回の講座で一番の盛り上がりをみせたのは、ペーパータワー作り。
「うわー!すごい!!」「高っ!!え⁈どうなってるの?」完成したタワーを目の前にしたこどもたちやスタッフから、驚きの声があがりました。
(左)背を超えるペーパータワー。作成したチームの子は、思わずガッツポーズ!
(右)筒状の紙を微調整し、高く重ねてタワーを作りました。絶妙なバランス感
タワーの高さに驚き、他のグループも測定結果に興味津々です
ペーパータワーは、数人ごとにグループになって、紙だけを使って積み上げ、高さを競うゲーム形式のワークショップです。

保育士の研修でも取り入れられることが多いそうで、年齢に関係なく童心に帰って夢中になれます。

こどもたちは、初めて組んだグループでしたが、試行錯誤を繰り返し、なんとか形になったり、崩れて形にならなかったり(笑)

実際の保育でも、幼児がブロックなどを積むうちに「高く積み上げたい気持ち」になることがあるそうです。
背の高さを超えると椅子に乗り、机に乗り、背の高い大人に協力を仰ぐこどもの様子を、写真で市川さんは紹介してくれました。

「こどもの発想や夢中になることのおもしろさに触れられるのは、保育特有の魅力」だそうです。

市川さんからこどもたちへのメッセージ

今回の講座のサブタイトル「乳幼児の教育、保育って必要なの?」という問いの1つの答えになる言葉です
講座の終盤、こどもたちに印象深かった言葉を聞いてみました。

「幼児期は建物でいう基礎作りで、その上に、力がかかる柱や床に見立てられる小学校、(中略)社会人は絨毯やカーテンで人の目にとまりやすい、後からのものほどやり直しが効く、という言葉が心に残りました。」
「感謝を伝えられないままお母さんが亡くなってしまい、後悔しているという話を聞いて、感謝を伝えたいと思いました。」

市川さんがこどもたちにたくさんの言葉を届けてくれたため、響く言葉は、こどもたちによってさまざまでした。

最後に、市川さんが大事にされている「自分はいつでも変えられる」というモットーが伝えられました。「他人を変えることは難しいが、自分はいつでも変えることが出来る。色んなチャンスもある。人生はできた・できない、100点・0点といった結果だけじゃない。結果よりも、その過程がどうだったか、どう変われたかが大事だと思う」

市川さんの熱くて、強くて、あたたかいメッセージに包まれながら、第一回こどもキャリア大学は、こどもたちの真剣なまなざしで幕を閉じました。

今後の講座も、こどもたちの反応が楽しみです。
こどもたちは市川さんの目を見て、心で受け止めながら聴いていました
第2回は、JALの整備士の吉田さんの講座が10月16日に開催される予定です。
羽田空港での開催になります。
本物の飛行機や整備作業を見ることができますよ。

第2回だけの個別の申し込みも受付できます。
ぜひご参加ください。
お問い合わせ先
こどもキャリア大学申し込みフォーム
写真・文=松本 裕美枝(かけはしライター)