毎回違った分野の魅力的な講師を迎えて開催している「こどもキャリア大学」は、今回で第6回目を迎えました。

講師は、横浜市でも数少ない無農薬無肥料栽培に取り組む、農家の鈴木和夫さんです。
鈴木さんが持ち込んでくれたお野菜と一緒にハイポーズ!見たことがないお野菜がいくつかあり、興味津々のこどもたちからはたくさんの質問がでました。

無農薬無肥料栽培に出会った鈴木さんの半生を知る

「さて、みなさん。手元にあるさやには種が入っています。この種はなんの種か分かりますか?」と鈴木さんからクイズが出題されました。
こどもたちに配られたさやに入った種。いろんな方向から眺めたり、振ってみたり、みんな真剣に考えました。
考え込んでしまうこどもたち。

枝豆、いんげん、たまねぎなどさまざまな回答の中に、正解の「大根」もありました。

さやを割ってみると1~2ミリほどの小さな種が、数えきれない程こぼれ出てきました。
この種は鈴木さんの畑から採取したもので、鈴木さんの農法では種は買うものではなく、育てた野菜から採るものだそうです。

肥料は使わず、代わりに草を敷き、微生物の力を借りて土を育てています。
農薬も使用していません。


鈴木さんと無農薬無肥料栽培との出会いは、20数年前まで遡ります。
鈴木さんは縁あって、無農薬無肥料栽培を実践している徳島の農家さんで農業研修を受けられることになり、実践を積んだあと横浜市に帰ってきました。
現在、鈴木さんは栽培した野菜を、定期購入のお客様や幼稚園・保育園などに届けています。


講座では鈴木さんの半生を振り返り、その時々の喜びや悩みも語られました。

受講したこどもたちからは、無農薬無肥料での栽培方法やメリット、難しさなどたくさんの質問がでました。
積極的に質問したり、発表したりと講座は盛り上がりました。
休憩時間にも、積極的に質問。オンラインで参加している子も、チャットで質問を届けてくれました。

心に響いた言葉①「失敗に慣れれば、失敗は怖くない」

講座には、鈴木さんの経験から導かれた考え方が随所に散りばめられていました。
その中で、こどもたちからの反応があり、スタッフの印象にも残った言葉をご紹介します。

まずは、失敗について。

「もう20年以上農家をやっていますが、種をまいても野菜が収穫できない時がいまだにたくさんあるんです。失敗をたくさん経験してますが、見方を変えてみると失敗には慣れているということにもなります。失敗に対して恐れがないので、何度もチャレンジができ、成功できる確率もあがっていると感じます。また、おもしろいのは一度成功したからと言って、次も成功するとは限らないってことです」

鈴木さんは何度失敗しても、必ず次の種を畑にまいてきたのだと感銘を受けました。

小学生や中学生にとって、身に染みてわかるのは難しいかもしれませんが、心のどこかに残っていたら支えになる言葉かなと思います。
失敗について話す鈴木さん。こどもたちはリラックスして聞いています。

心に響いた言葉②農業(仕事)は「食べ物を作る」という生きることそのもの

鈴木さんは「正直そんなに儲かってはいないが、不思議と不安はないんです。なぜなら、食べ物を作っているから、食べることには困らないからです。好きな農業をやって生活ができています。私は農薬も肥料も種も買わずに栽培しているので、流通などの外的要因によって野菜が作れなくなる可能性は少ない。そのことは大きな安心感にもつながっています」と話します。

世間一般として、お金で価値を測りがちですが、全く異なる価値観が鈴木さんの中には存在していました。

大人にとっても、聴き応えのある人生観でした。
こどもたちは何を感じたでしょうか。


*****最後に*****

鈴木さんの農業の話を聞いて、すっかりファンになってしまったこどもたち。

鈴木さんのお野菜を味わってみたくなり「どうやったら鈴木さんのお野菜が買えるのか」「どのように検索したら出てくるか」と最後までこどもたちの質問は続きました。
前半と後半の間の小休憩。鈴木さんの周りに集まるこどもたちのおしゃべりは、止まりません。
鈴木さんと、色とりどりの鈴木さんのお野菜たち。本日は素敵な講座をありがとうございました。
今年度の講座は残すところあと2回になりました。

次は建築士の佐藤さんの講座が2月27日に開催される予定です。
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写真・文=松本 裕美枝(かけはしライター)